「安全と能力伸長のために養護学校への進学を勧める」というのが町教委の方針である。傾斜地に立つ中学校の階段の多さが危険だというが、それが本当のバリアーなのか。就学指導委員会は、本人や保護者のニーズや願いを聞き取ろうとしたのか、疑問が残る。「特別支援」とは、あくまで当該生徒のニーズを把握して育ちを支援することが主旨であるはずだ。
国連・障害者権利条約(06年12月)は、「障害を理由とする差別」とは、「障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限」と定義している。教育においては、障害を理由として排除されず、自分の生活する地域社会で他の者と平等にインクルーシヴで質の高い無償の初等・中等教育をうけ、必要に応じた合理的配慮、効果的で個別的な支援が提供されることなどを求めている。
なかまと共に過ごす新しい中学生活を期待と不安で心待ちにしていた少女の願いを誰もが阻んではならない。共に生きることへの権利であり、誰もが侵すことのできない権利であるからだ。ましてや少女には小学校6年間を通常学級で共に学んだという事実が厳然とある。施設整備は町の責任とされており、今日の地方財政の逼迫が問題の入口を塞いでいるようだ。しかし、少女の心を塞がせてはならない。何ができるのか、バリアーは取り除こうとする意志と工夫がなければ動かない。
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